スポンサーサイト 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

失って得るもの。『全盲先生 泣いて笑っていっぱい生きる』新井淑則 <自伝・自分史・その周辺27> 

日本で唯一の、盲導犬を連れた中学教師 新井淑則先生。
人生半ばで視力を失った彼が、失明の恐怖を克服し、そこから新たに生きなおした成長記録です。

埼玉県秩父の中学に勤める新井先生は、教師として脂ののりきった28歳の年に、網膜剥離で失明します。
文字通り、人生の真っ暗闇に迷い込んだ新井先生は、いま写真で見る穏やかな表情からは想像もできない、ひどい荒れ方をしたこともあったようです。

二人目の娘を出産したばかりの妻の肩には、家事、育児、夫の父母を含めた家族四人の生活、そして高額な医療費。すべての責任が覆いかぶさっていました。
産休明けも慌ただしく、中学教師に復職した彼女に、
「おまえは働けるからいいよな」
トゲのある言葉を投げ掛けてしまいます。

「このまま死ねばラクになる」
何度も死の誘惑に駆られた新井先生を、こちら側に引き止めたのは、自らも全盲でありながら、普通高校で教鞭を取る宮城道雄先生の熱心な説得でした。
「あなたならできる。がんばろうよ」
説得を繰り返し、復職への努力を促しました。
少しずつ、前向きな気持ちを取り戻した新井先生は、自立訓練に耐え、盲導犬を得て、行動範囲を広げ、盲学校の教師になります。
そして、2007年には、普通中学校の教師の辞令を受けます。
普通中学に復職できることは、念願がかなった喜びであるものの、そこには不安と心配もあります。

  できるはずと思い、いやできないのでは、と心が揺れます。
  心が揺れたら、逃げずに果敢に立ち向かうほうをぼくは選ばなくてはなりません。


身体的な障害(新井先生は「害」の字は使わず、「障がい」と表記します)によってもたらされた、ほとんど心の死の状態から、最後に示したこの決意。
赤ん坊から大人になる成長過程を、新井先生は二度体験したのだと思います。
希有な経験であり、何事にも代えられない人生です。

やんちゃで家出癖がある初代盲導犬クロードとの、細やかな心の交流も描かれています。
年老いて、引退が迫るころの先生と家族の悲しみ、手放さなければならない辛さは、いかばかりでしょう。

二代目盲導犬マーリンは、仕事熱心な優等生タイプ。でも、一日の仕事を終え、部屋に戻ると、

 「お仕事が終わったんだな」と思うと飛びついてきます。
 もの静かな優等生の盲導犬マーリンが、普通のワンちゃんに戻る瞬間です。


パートナーであり、愛犬でもあるという関係をラブラドールと結べることは、ちょっと羨ましい気もしました。



コメント

コメントの投稿















管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://jibunworks.blog16.fc2.com/tb.php/119-5d2e07b0

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。