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理不尽を知る。『妻が、突然倒れたら』松本方哉 <自伝・自分史・その周辺38> 

フジTVの夜のニュース番組で、滝川クリステルさんの斜め後に座って、解説をされていた松本方哉さんが書かれた、夫人の闘病記です。

この本は、突然の病に対する私たちの想像力のなさを、痛切に気づかせてくれます。

たとえば、救急車のこと。

信号を渡ろうとするとき、サイレンを鳴らしてやってくる救急車に出会うと、
「救急車だよ。こっちも急いでるんですけど……」
と、心の中で呟いてしまったこと、一度や二度ではありません。
この本を読んで、そんなときの自分の想像力の欠如を、本当に申し訳なく思いました。

救急車に乗っている人の痛みや苦しみを、自分の痛みや苦しみのように想像してみること。

 木曜日の夕方だった。道は混んでいて、救急車は車と車の間をぬうようにして走る。
 「われ関せずとばかりに、行く手をふさいで動こうとしない車もいる。
 そのたびに救急車は、そういった車を迂回しようと、大きく速度を落とす。
まるで障害物競走でもしているようだ。
 救急車の窓を開けて、怒鳴りつけたくなってくる。
 「どいてくれ。人間の命をなんだと思っているんだ」



くも膜下出血で妻が倒れたとき、四十六歳。十歳の息子がいました。
思いも寄らぬ不幸に襲われ、それまで家庭を妻に任せきりにしていた仕事人間の夫の生活は一変します。

一命を取止めたものの、妻には高次脳機能障害が残りました。
長い闘病、夫と息子には果てしない介護の日々が続きます。

妻は、世界的な賞を数多く受賞しているビスクドール人形の作家でした。
しかし、左半分の視野が認識できなくなってしまう障害により、そのキャリアを諦めざるを得ませんでした。

杖を突きながらもやっと歩けるようになっても、人々の無神経な視線にさらされます。

 どの視線も、まったく遠慮というものがなかった。物珍しげの視線も、また、なぜか、腹立たしげな視線もあった。
 私にはまったくはじめての経験だった。
 私は、声を上げて怒鳴りつけてしまいそうな自分を必死に抑えていた。

また、別のある日、家の近くのイタリアン・レストランで食事をしようと思い立った日のこと。

 お昼前で、客はまだ一人もいないようだった。
 レストランの前には、その店のオーナーか、コックらしい男性が立っていた。
 「食事がしたいのですが、空いていますか」。私は妻が転ばないように気をつけて歩きながら、その人物に声をかけた。
 「いっぱいだよ。今日は予約がいっぱいなんだ」。
 男性は、私たちを見ると、ひと呼吸置いて、そういった。冷たい目で、妻を見ていた。
 妻が差別されたと思った。


 突然、妻が倒れたら……

こういう理不尽な人間たちがいて、こういう理不尽な世の中だということを思い知らされる。

それは、いつ自分に振りかかるかもしれない試練です。
せめて、病に倒れた人とその家族の痛みへの想像力だけは持っていたいと思います。



コメント

blo-lin新規登録担当のmitoです。

救急車に対してどかない車は分かりますが、杖をついてる方に「予約がいっぱい」と平然と言える神経がわかりません。

理不尽ですね。

自分が他人にも理不尽なことをしているかもしれないけれど、確かに理不尽な世の中だと思います。

見方が変わればそれだけ理不尽かそうでないかも色々出てくるのでしょうけど。。。

考えさせれました。

Re: タイトルなし

mitoさま

コメント頂戴し、ありがとうございます。
これからも、よろしく、お願いします。

おっしゃるとおりですね。
でも、「予約がいっぱい」と言い放った人は、
松本方哉さんと奥様だということがわかったら、
手のひら返して席を用意しそうな気がします。
そういう店だとわかっていたら、そういうところで食事したくないですね。


> blo-lin新規登録担当のmitoです。
>
> 救急車に対してどかない車は分かりますが、杖をついてる方に「予約がいっぱい」と平然と言える神経がわかりません。
>
> 理不尽ですね。
>
> 自分が他人にも理不尽なことをしているかもしれないけれど、確かに理不尽な世の中だと思います。
>
> 見方が変わればそれだけ理不尽かそうでないかも色々出てくるのでしょうけど。。。
>
> 考えさせれました。
  • [2010/01/21 02:01]
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  • 自分史プロデューサー タケ
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