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父と子の八年間。『子どものことを子どもにきく』杉山亮 <自伝・自分史・その周辺62> 

この本を読みはじめた途端、「しまった!」と思いました。
多くの人が、私と同じ思いを抱いたことでしょう。
心の奥にあるものを、もう開けっ広げに見せてくれなくなった子どもを持つ親は、「なんで、自分も、これ、やらなかっただろう」。
誰でもくやしがると思います。

杉山さんは、息子の隆くんが三歳のときに、家の近所の喫茶店に連れだします。
いつもは二つ年上の姉といっしょなのに、少々不安げな隆くん。
八年に及ぶ隆くんへのインタビューの、記念すべき第一回目でした。こんなインタビューです。

あきら 隆さー、字が読めなくて困らない?
たかし うん。
あきら 看板なんか見て、なんて書いてあるのかなーって、考えることない?
たかし ある。でも、「なぞなぞ工房(杉山さんがやっている手づくりおもちゃの工房のこと)」っていうのはさ、読めるよ。
あきら (笑)いつも見てるもんな。
たかし (笑)うん。
あきら それでもやっていけるんだ。


45分テープをまるまる1本使ったインタビューを終えて、杉山さんの感想です。

 それにしてもこのインタビューの冒頭のシーンは破壊力がある。
 ここがどこかわからなくて、今がいつかわからなくて、壁に書いてある字が読めなかったら、大人ならパニックだろう。
 ところが隆は、その状況下でもニコニコしていられるのだ。


杉山さんは、隆くんの無垢の強靭さに感嘆します。
と同時に、「隆」というオリジナルな存在が、いずれ失われてしまうことを考えずにはいられません。

 あと数年もすれば、隆の口のきき方もぼくたち大人のそれに近いところになってくるだろう。
 隆はあるものを獲得する分、あるものを失うだろう。

小学校に上がる前の隆くんは、最高にかっこいい少年です。
5歳のインタビューでは、幕張メッセで行われたおもちゃショーで迷子になったことを語ります。
「迷子になったら駐車場で会おう」と父に言われていた隆くんは、駐車場で自分の家の車を探します。
父は、その約束をすっかり忘れてしまっていました。
隆くんが泣いたら、迷子センターに連れて行かれるはずなので、呼び出しがかからないということは、自分が迷子だということに気づかず、夢中で遊んでいるのだと思い込んでいました。
そのために、会えないまま2時間。
迷子のとき、どんな気持ちだったかを尋ねます。

あきら 泣けばまわりの大人とか係の人が「迷子センター」に連れていってくれるし、そしたら名前を放送してもらえるからわかると思って、放送があるたび耳をすましていたんだけど、いつも違っていたの。
たかし 泣いている場合じゃないと思った。(きっぱり。)それに、おとうさんは前に「泣いたってしょうがないだろう」ってぼくに言ったよ。

 ぼくの方にしてみれば、ぼくの考えていた隆像より実際に隆の方がずっと自立していたのにそれに気づかなかったのが、再び会うのに二時間もかかってしまった原因だろう。

毎年一回、八年間に及ぶインタビューで、杉山さんは隆くんの成長を確実に記録することができました。
読み終えて、「これ、やりたかったなあ」と、親たる人は必ず思うことでしょう。



自分史の本棚
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