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あともう数ヶ月。『がんと闘った科学者の記録』戸塚洋二 <自伝・自分史・その周辺18> 

余命宣告を受けた人が科学者であり、自分自身の病気も死も、人類の未来のために、記録しなければならないと考えたら、こんなふうに生きるのだと教えてくれる本でした。

2000年、戸塚洋二氏は、大腸がんを発症しました。
そのとき、彼は、ニュートリノの研究でノーベル賞を受賞した小柴昌俊博士の後を受け、スーパーカミオカンデの責任者であり、ノーベル賞にもっとも近い男と目される、日本の物理学界の第一人者でした。

しかし、彼はがんと闘いながら、国家プロジェクトのリーダーを務めることが、他のメンバーとプロジェクトに与える影響を考え、退職し、2007年から年金生活者となります。
それと同時にはじめたブログ「A Few More Months(あともう数ヶ月)」が、この本の元となっています。

国家プロジェクトを断念しても、彼の研究への飽くなき欲求は、損なわれませんでした。
ブログの圧倒的な情報量で、私たちは、戸塚氏の心がまったく折れることがなかったことを確認できます。
「商売柄、数値化しないと気が済まない」と言いながら、抗がん剤の効果と腫瘍サイズの関係のデータを作り、CT画像の変化を分析し、投薬の副作用について考察し、「大腸がん治療経過」として記録します。

自分の主治医よりも詳しく、自分の病について知ろうとするのは、一つの身体に、病巣とそれを研究分析する頭脳を併せ持った人間の業(ごう)なのかもしれません。
しかし、彼の健全な脳は、それだけでは飽き足らず、さまざまなカテゴリーへ、神経細胞を広げていきます。

□ 科学者として、先輩から受け継いだものを、若い世代に伝えていこうという試み。
□ 宗教と科学について、特に釈迦が持っていた科学的な視点についての考察。
□ 研究者として滞在した奥飛騨のこと、その自然のこと。
□ 自宅の庭に咲く花について。
□ 人間の生と死について。

ブログ解説の2007年8月から、最後の更新となる2008年7月まで、それぞれのカテゴリーで、1冊ずつの本ができるほどの情報量を、記録し続けます。

身体は思い通りにならなくても、脳は大丈夫。
病気とうまく付き合っているかと思えた2008年3月、がん発症後、はじめて譫妄(病気による意識障害)に陥りました。
身体のデータを取ることで、自分を研究対象としてしまう。
ただ死を待つだけではない、病気との積極的な関わりを、科学者は選択しました。
しかし、研究される身体ではない、研究する側の脳に起こった障害は、どうすればよいのでしょう。
でも、そのときでさえ、彼は科学者として最後まで生きることを選択します。

植物のお化けのような幻覚が浮かんで、頭から離れなくなります。すると、

別の場所にある理性を持った(科学者としての)頭脳が、あっけにとられてこの絵を見ています。
考えても無意味なことはわかっているので、今後この幻覚が膨らんで、理性的頭脳を圧倒するのかどうかが、当面の関心事です。



  強がりに聞こえますが。自分の頭脳を研究する楽しみができました。

死としっかり向き合いながら、最後まで本当によく闘った科学者でした。

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