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どん底まで落ちてみる。『失踪日記』吾妻ひでお <自伝・自分史・その周辺20> 

人が、落ちるところまで落ちる様を、フィクション以外ではなかなか知ることができません。
「落ちるところまで落ちる」実体験をした人は、もう私たちとは接触できない、遠いところへ行ってしまうからでしょう。
遠いところから戻ってきて、しかもその人が体験の一部始終を漫画にしてくれるなんて、かなりありがたいことです。

漫画家 吾妻ひでおは、創作の苦しみを抱え込んでいました。
雑誌社が、自分が描きたい漫画を描かせてくれない。
描いたものに納得できない。
自分の納得レベルを下げれば書ける。
しかし、納得レベルを下げることは、さらに苦しい。

そして、その生活から逃げ出し、あっけなく落ちていきます。

自殺未遂
ホームレス
アル中
精神病院


ありえない体験ですが、漫画という手段で表現するせいか、そんなに悲惨に感じません。
悲惨に感じない理由は、もう一つあります。

実はすぐ戻れるらしい。

不審尋問で連れて行かれた警察で、ファンの巡査に色紙をねだられる。
「先生は、こんなことをしている人じゃない」と説得される。
捜索願が出ていて、すぐに家に連れ戻されてしまいます。

再度、家出してホームレスに戻りますが、その生活にも慣れてくると、

 「ホームレスは閑だ」
 「みんな働いているオレもちょっと働きたい」

そう思い、なぜか配管の会社に勤めてしまいます。(元ホームレスなのに、すぐ働ける)
ちゃんと仕事も覚えて、毎日の肉体労働で、ムキムキの健康体になり、しかも、会社の社内報の作品募集に応えて、漫画を投稿し、まんまと社内漫画家になってしまう。
編集者に追いつめられて嫌々描くのは辛いが、自分が描きたいものを自由に描くのは好きなのですね。

ホームレスになる人の原因の大多数が、金銭トラブルでしょう。
しかし、彼の場合は、創作意欲の喪失。
そこから生じる精神疾患が原因と思われます。だから、

気持ちさえ変えられれば、元に戻れる。

「漫画家 吾妻ひでお」が、自分自身をもう一人の自分として冷静に見守っている感覚を持っていることが、どんなどん底からも戻って来られる理由なのでしょう。
しかし、本当の問題は戻ってきたその後にあるのかもしれません。
吾妻さんは、はっきりと描くことを避けているようですが、日常である創作生活の方に、むしろ彼のどん底が存在しているのではないかと思いました。

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